原油市況-価格推移見通しと基礎知識

▼WTI原油価格リアルタイムチャート-1分足

1.原油基礎知識

【石油連盟参照】
【原油を精製してできる石油製品】
原油からガソリン、灯油、軽油など複 数の製品が同時に一定の割合(得率)で生産されます。つまり原油からガソリンだけを精製することは出来ません。


【原油取引単位のバレルとは】
「バレル」(barrel)とは英語で「樽」という意味で すが、バレルがなぜ石油の計量や価格設定の単位に使わ れることになったのでしょうか。 石油産業は、今から150年前の1860年代に、アメリカの ペンシルバニア州での油田開発の成功がスタートだとされ ています。 当時は、現在のドラム缶のような石油の輸送容器がな かったので、欧州から輸入していたシェリー酒の空樽(50米 ガロン)を利用していました。この樽は木製のため、輸送中 に中味が蒸発や洩れにより目減りし、目的地に着いたときに 平均すると42米ガロン(1ガロンは約3.8リットル)となったため、 これを1バレル(約159リットル)とすることになったといわれてい ます。 以後、バレルは国際的に石油の消費量、原油の生産量・埋 蔵量の計量や原油価格設定の単位として使われています。


【シェールオイル・ガスとは】
今後の原油相場の鍵となるシェールオイルとは何か!?
「シェールガス」、「シェールオイル」とは、従来よりも深い 数百mから数千mの深さにある「シェール(頁岩)層」と呼ば れる、固い地層の中に存在する天然ガスと石油を指しま す。従来は「非在来型石油資源」とされ、存在は古くから知 られていたものの、採掘の困難さと膨大なコストから、商業 生産は困難と考えられ、ほとんど開発の手は加わりません でした。 しかし、今世紀に入り、シェール層に水平掘削を使って高 圧の水を送り込み、その水圧で岩に亀裂を作ってそこから ガスや石油を回収するという画期的な技術 (水圧破砕法) が米国で開発されると、原油価格の上昇もあって一気に シェール層の開発が進展しました。
・期待されるシェール革命
2000年代後半から急速に進んだ開発により、2012年ま でにシェールオイル3,450億バレル、シェールガス7,299兆 立方フィートが発見されたと米エネルギー情報局は2013 年6月に公表しています。これは在来型の石油埋蔵量の約 10%、天然ガスの約50%に相当するものであり、その分 資源量が拡大したといえます。またシェ-ルガスの開発によ り、石油・天然ガス産業が活況を呈し、米国内の天然ガス 価格は下落、輸入石油・ガスの削減による貿易収支の改 善、エネルギーコストの低減による米国製造業の競争力の 回復などが顕著になってきました。また、不安定な中東石油 への依存度の低減が期待され、米国の中東政策にも変化 が期待できるなど、まさに米国にとっては「革命」ともいうべ き事態に発展しています。 一方で、急速な開発に伴う米国内での環境問題の発生 や、国際的なエネルギー貿易の流れにも変化が生じるなど 注視すべき課題も多く、今後も注目していく必要があります。

【原油生産量と埋蔵量】
・世界の原油生産量(2013年)は、1日当たり約75,278千 バレル(年間約43億6,800万S)でした。主な生産地域は、 中東(30.5%)、東欧及び旧ソ連と北米が17.8%、アフリ カ、中南米、アジア・太平洋がそれぞれ10%前後となってい ます。 また、国別にはロシアが最大の産油国で世界全体の 13.8%、1,040万バレルを生産しています。次いで、サウジ アラビア(12.8%、964万バレル)、アメリカ(10.0%、754 万バレル)の順となってます。原油生産量上位10ヵ国で、世 界全体の65%を占めています。 アメリカの原油生産量は2008年には534万バレルでし たが、その後、シェールオイルなどの開発が進み、2013年 には754万バレルと2008年に比べ、220万バレル増となっ ています。国際エネルギー機関(IEA)によると、今後、アメリ カはシェールオイルの開発がさらに進み、ロシアやサウジア ラビアを抜いて、最大の産油国になると予測しています。
・原油確認埋蔵量(2013年)の48.6%は、中東地域に 存在しています。中でもペルシャ湾岸諸国の割合が大き く、サウジアラビア、イラク、クウェート、アラブ首長国連邦 (UAE)、イランの5ヵ国で、世界全体の46.4%を占めてい ます。 国別にみると、中東地域以外の産油国ではべネズエラが 世界最大の埋蔵量保有国で、世界全体の18.1%を占め、 また、カナダが10.5%で第3位を占めている点が注目されま す。 べネズエラには石油類似資源であるオリノコタールという 超重質油、カナダには高粘度の重質油を含むオイルサンド の埋蔵量が原油確認埋蔵量にカウントされていることによ るものです。


【日本の原油輸入先】
輸入先は中東、東南アジア、中央アジア、アフリカ、中南 米、ヨーロッパ、オセアニアなど多岐に亘っていますが、中 東地域が全輸入量の約83.6%と高い割合となっています。 原油の輸入先を国別にみると、サウジアラビアが全輸入 量の30.7%と最も高く、次いで、アラブ首長国連邦(UAE) 22.7%、カタール13.0%、クウェート7.2%と続いています。


2.原油相場について

【WTI、ブレント、ドバイ原油の原油市場】
・WTIはアメリカ、ブレントは欧州の指標
世界で初めて先物市場に上場されたWTI(West Texas Intermediate)原油は、米国テキサス州で生産され、オク ラホマ州のクッシングが集積所となっています。現在の生産 量は30万バレル/日前後といわれ、量的には多くありません が、NYMEX市場では5億~10億バレル/日と、世界の石油 需要量の最大10倍くらいの規模で取引されており、原油 価格の指標として最も多く利用されています。また経済の 中心でもあるニューヨーク市場では、米国の景気動向など 経済要因の影響も受けています。 ブレント原油は、北海で生産されロンドンのICE(InterContinental Exchange)で取引される原油で、現在の生 産量は60万バレル/日前後といわれています。WTIが米国 市場で指標として利用されているのに対し、ブレントは欧州・ アフリカ市場で主に指標として利用されており、リビア等、 北アフリカ諸国の動向やロシアの動向にも大きく影響を受 けています。
・ドバイ原油は中東、アジアの指標
ドバイはアラブ首長国連邦の7首長国の一つで、産油国 というよりは金融・観光立国を目指しています。ここで生産さ れるドバイ原油は、生産量も小さく、NYMEXやICEのように 上場されている先物市場もありません。しかし、かつてのサ ウジ原油のように仕向け先の制限が課されることもなく、 中東原油として最も需給状況を明確に反映する原油とし て、中東原油のアジア市場向け販売には指標として利用さ れるケースが多くなっています。 実際の価格は、価格情報紙であるプラッツが報じるシン ガポールでの相対取引価格や日本経済新聞が調査する東 京での取引価格などが利用されています.。


【日本に輸入される原油価格は?】
1988年、サウジアラビアが公式価格による販売方式を改め、長期契約に基づく取引にもスポット価格に準拠した市場 連動方式を適用したことから、各産油国ともほぼ同様の方 式に変更して現在に至っています。サウジアラビアが導入し た方式は、米国向けがWTI原油、欧州向けがブレント原油 のそれぞれスポット価格に準拠したもので、これに対してア ジア向けはドバイ原油とオマーン原油が指標となりました。 具体的には、ドバイ原油とオマーン原油のスポット価格の 1ヵ月間の平均値に、毎月初にサウジから通告される調整係 数を加減して決定されています。また、産油国によっては、こ れらを自国で勘案のうえ、後決めで決定価格を通告する方 式もあります。この結果、長期契約といえども価格はスポット 価格がベースとなり、スポット取引との差が縮まりましたが、 長期契約には数量的な安定性が、またスポット取引では需 給調整役としての機動性がそれぞれの長所となっています。 スポット原油は、日本の輸入量の約3割を占めています。

【原油価格と為替の関係】
国内の製品価格は、ドルベースの原油価格と為替レートの 2つの要因で変動しています。石油元売会社はこの2つの要 因を踏まえて、卸価格の改定を行っています。 2013年に入り、為替の円安傾向が進みました。原油価 格の変動と製品価格への影響を2012年と2013年の年平 均で比較すると、この間、原油価格は高値ながら4.25ドル/ バレル下落しました。一方、為替レートは17.1円/ドルと大幅 な円安が進行しました。 この結果、製品価格への影響は原油価格の引き下げを 相殺して、9.8円/Rの上昇となりました。 この間の製品価格の動向をみると、ガソリンは9.0円、軽 油も7.9円の上昇に止まり、原油コストの上昇分9.8円には 及びません。原油価格の上昇分は製品価格に十分転嫁さ れていない実態となっています。 為替の円安傾向は、米国の景気動向を反映して、2014 年9月以降急速に進み、11月には7年振りに115円/ドル を上回る勢いとなっていますが、製品価格への影響が懸念 されています。

【ガソリンの小売価格の内訳】
ガソリン小売価格の約4割が税金。
現在、ガソリンには1リットル当たり53.8円のガソリン税と2.54 円の石油石炭税が課せられています。 ガソリン小売価格に課せられている税金をみると、2014 年9月の全国平均小売価格は1リットル当たり約166円、税金は 消費税をあわせると約69円にもなります。ガソリンは生活 必需品であるにもかかわらず、税負担率は約4割とタバコ やビール等の嗜好品に次いで高くなっています。 また、バスやトラックの燃料である軽油の小売価格は1リットル 当たり144.6円(2014年9月平均)ですが、税金は消費税 をあわせると約43円となり、税負担率は約3割とガソリン同 様高くなっています。

3.原油価格見通し(2016-2017)

【世界銀行見通し:2017年は55ドル】
2016年10月20日、ワシントン— 世界銀行は、これまで長期にわたり生産量に上限を設けてこなかった石油輸出国機構(OPEC)が事実上の減産に向け動き出そうとしている事を受け、2017年の原油価格見通しを1バレル当たり53ドルから55ドルに引き上げた。

【GS見通し:足元は20~40ドル】
2016/3/8発表:米ゴールドマン・サックスは、原油やその他のコモディティー(商品)価格の最近の急伸について、時期尚早との見方を示した。市場がリバランス(再均衡)するには、価格の低位推移が当面必要と説明した。これまでの原油安で世界的に生産削減の動きが加速したことから、原油LCOc1はこの1カ月弱の間にバレル当たり10ドル超上昇した。
ただゴールドマンは、顧客向けのリサーチリポートのなかで、原油価格が早すぎるタイミングで上昇すれば、2016年下半期の市場リバランスに必要な供給削減が進まず、結局は自滅することになると指摘。
「リバランスを終えるためには、低価格が必要。そうでなければ、昨年春のように、原油価格上昇は自滅につながる」との見方を示した。そのうえでゴールドマンは、原油市場の荒い値動きは当面続くとし、足元はバレル当たり20─40ドルで推移すると予想した。

【IEEJ見通し:2040年迄に127ドル】
2014年発表:日本エネルギー経済研究所(IEEJ) IEEJ では,日本の CIF 価格(船積み価格に輸 送コストや保険料を含めた輸入価格)について分 析を行っており,2040 年断面で 127 ドル/バレル 程度になるとの見通しを示している(図表 6)。 見通し期間前半においては,13 年見通しに比べ, 至近の需給緩和による価格の下落傾向を反映し, 14 年見通し価格が僅かに低下しているが,長期的 な価格は 2030 年以降同じになるとしている。 需給についてみると,需要は,2040 年にかけて 世界全体で堅調に増加していくとしているが,需 要増加率自体は 13 年見通しに比べると,非 OECD 諸国における需要増加の鈍化を反映し,僅 かに低下した見通しとなっている。しかし,中 国・インドをはじめとするアジア諸国の存在感は 依然として大きく,世界の石油需要増分の 6 割強 がアジアに起因するとしており,中国は 2030 年 までに米国を抜き世界最大の石油消費国となる 見通しが示されている。 供給については,2020 年頃までは非 OPEC 諸 国による石油供給が大きく増加し,供給シェアも 約 6 割まで増加するが,その後は緩やかに減産へ と向かい,長期的には低コストで開発可能な石油 資源を有する OPEC 諸国による供給が増加して いくとしている。